人間辞めたい。
わたしがそう思い始めたのはいつからだったんだろう。
中学生の頃にはもう思っていた気がする。
なんのために勉強してるんだろう。
どうして生きてるんだろう。
そんなことばっかり考えてる毎日だった。
高校に行ったって何も変わらない。
大学に行ったら少しは変わったけど、それでもわたしはその答えを見つけたわけじゃなかった。
みんなみたいに化粧をして、みんなみたいな髪型になって、みんなみたいな服を着た。
わたしはちょっと頑張るだけで良かった。わたしは生まれつきの素材がいい。運もとってもいい。苦労なんてした記憶もない。
自慢に聞こえるかもだけどそれは本当だから。
そうやってみんなといるのも遊ぶのも楽しいのはわかる。でも、だから何なんだろう。
なんでだろう。わたしだけなんでしょうか。こう思っているのは。
わたしたちはみんな嘘をついて生きている気がする。本当にしたいことをしていない気がする。
本当にしたいことってなに? わかんない。 今しているということが違うということだけはわかってる。
わがままかもね。そうかもね。
わたしは漫画が好きだった。イメージと違うってよく言われたけど。
でも本当に、心から好きだった。漫画の中の世界は素敵だった。
どこがって、普通言ったらいけないことを平気で言える世界なところが素敵だった。
普通ありえないようなことをしてしまったり、やっちゃったりしちゃうところも素敵だった。
すごい説明下手だけど、本当にそういうものを見た時が一番ドキドキした。
どうして現実はああいう世界と違うんだろう。でも、なんで?なんで?と本気で誰かに聞いたら引かれる。
みんな本当は好きなんでしょ? どうして誰もああいう世界を作らないの?
なんて思っていても、わたしも心の何処かではわかってる。うん。うん。そうだよね。あれは現実の事じゃないもんね。
現実つまんないね。死ねばいいのに。
どうしてもやっぱり、なんで生きるのかって考える。
世の中にいっぱいあるその答えは、わたしも確かにわかる。でも、心から納得もしていない。
次第に思い始めたけど、やっぱりそういうのはちょっと違う。あれはみんな用、もしくは大雑把な答えなんだ、って。
一人一人に答えがあるはずで、わたしにはわたし用の答えがある。
そこまで気がついたら、後はちょっと考えたらわかった。
本当のわたしの気持ち、見つかった。
あの頃から隙間さえあれば頭に浮かんできていた気持ち。
やっぱりそれがわたしの本当の気持ちなんだと思う。
そしてやっぱりわたしは運が良かった。
それを叶えてくれそうな、現実と夢を繋いでくれるような話を、見つけてしまった。
誰かに言えば十中八九止められる。
でも、わたしがわたしを止められない。
別に誰に理解してほしくもないですし。
だから、もう好きにさせて。
それはインターネットで見つけた。
どう見ても普通ではないところで見つけた書き込みだった。
インターネットって本当に現実なのかな、ってよく思ってた。
学校の友達が今日の出来事や食べ物を毎日書き込んでる。
でも、それって本当なのかな。そもそも現実ってなんなんだろう。
多分、自殺系サイトだったんだと思う。
わたしの心からの願望を文字にして、検索するページに入れてみた。
そしたら出てきたのがそこ。
びっくり。はしなかった。
世の中いろんな人がいることは知ってたし、わたしが願っていることは実はみんな少しは心のなかでは思っていたりもするんじゃないかなって思ってたから。
でも、やっぱり嬉しかった。本当にそういうのってあるのかなって思えたから。
わたしは、物になりたかった。
人じゃなくて、物に。前に付き合っていた時に、わたしを物として扱って欲しいって彼氏に頼んだことがある。
でも、それはやっぱりなんか違った。色々とめんどくさい。本当にそんな感じだった。
とまどいを覚えながらそれっぽく振る舞う彼にも、それに合わせて色々とそれっぽく振る舞おうとするわたし自身にも苛立った。
めんどくさい。めんどくさい。嫌悪感。
実はすっごいマゾだったんだ、って彼には言われたけれど、それは違うよ。
わたしは虐めて欲しい訳じゃなくて、きっと、人じゃなくて物に向けられているあの愛が欲しくてたまらないんだよ。
きっとね、あれが一番の完全な愛の形なんだよ。
無償の愛だもん。存在しているだけで大事にしてくれるんだもん。
頑張っても頑張ってもわたしもみんなも、女の子は人のままならぬいぐるみには勝てないよ、きっと。
『人形になりたい女性の相談を受けます。』
わたしは、そう書き込みにあったアドレスにメールをしました。
メールが返ってきた時には今までの人生の中で一番のドキドキでした。
その後はいっぱいメールしました。
相手の人はすごく良さそうな人で真面目そうな人でした。
少なくともわたしの話を本気で聞いてくれているのだけは伝わってきました。
わたしはその日に向けて、全て最後だと思って準備をしました。
自分の為に可愛いお化粧をして、人の目なんて気にしないで大好きなお気に入りの服を着て、自分の今までで一番な髪型になって。
こんなに楽しかったことはなかったです。
そして、今日がその日。わたしを人を辞められる日。
これからメールの人と会います。
こんなの危なすぎる、ありえない、なんて思わない。
でも少しは妄想する。例えば山奥に連れて行かれて犯されて殺されて捨てられるとか。
それもまぁ、わたしの理想に近いと言えなくもないからいいかも。
ただ、何か予想もしない出来事で泣いたり喚いたり騒ぐ自分は嫌だから、
一応冗談っぽくだけど、もしも今までの話が嘘でも別にいいですよ。わたしに何かするなら殺してからお願いしますとは言ってあるけれど。
相手の人はそんなことはしない、と笑い飛ばしてた。
その後の話では人形にするときはわたしには薬を飲んでもらうって言ってた。
どんな薬かはわからないけれど、飲んだらもう絶対に目覚めさせないでほしいと言っておいた。
わたしはもうわたしの体を自分で管理していたくないし。
でも本当に少しだけ気になったから、人形になった後は意識とかどうなるの、って聞いてみた。
それは自分はなったことがないからわからない、という答えが返ってきて少し笑ってしまった。それはそうだよね。
少しでも意識ありそうだったら優しく殺してください、というお願いをしておきました。
そろそろ時間です。いってきます。時間に縛られるのも最後です。
これが嘘でも本当でも、わたしの心の中にいた本当のわたしの気持ちを我慢することなく初めて言葉に出来てはじめて自分らしくなれた気がします。
わたしはもうなんにも考えたくない。なんにも悩みたくない。
さようなら。
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なにもみえない… ゆめをみてるの…
「…ただいま。」
…とおくからいつものこえがきこえる…
あのこえがきこえるとほっとするの…
おかえりなさい
「…今日も可愛いよ。やっぱり家に帰ってくるとほっとする。」
なんにもしてなかったの ねてたの ゆめをみてたの
なのに なのに
「大好きだよ。」
うれしい うれしい わたしも わたしもなの
きもちいい きもちいい
「今日も一緒に寝ようね。」
うん うん はやくねようよ もうねようよ いっしょに いっしょにねたいよ
ずっと ずっと
「そうだ…。新しい服を買ってきたんだ。ご飯食べたら、着せてあげるね。」
うれしい うれしい いつもいろんなおようふくまでかってもらえて
やさしくそっときせてもらえるの
「ああ。似合ってる。いつもよりもますます可愛いよ。どんな服でも文句も言わずに着てくれる。本当に君は素敵だ。」
ほめてくれてる かわいいっていってくれてる
わたし なんにもしてないのに
いるだけで こんなに あいされてる
「さぁ。寝ようか。君が来てくれてからは毎晩とても良く眠れるんだ。もう、君さえいてくれたら僕は何も…。」
わたしも わたしも ぎゅって ぎゅってして
だいて ちからいっぱいだいて
「ああっ…ああっ…! 気持ちいいっ…! 枕にもなってくれる優しい君のことはもう…ずっと手放したくない…。それに、もっと、もっと色んな事を…。」
していいの なんでもしてほしいの これからもずっと わたしにすきなことしてほしいの
わたし しあわせなんだよ あなたのすきなこと わたしもすきなの
あなたのすきかってが わたしのしあわせなの…
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